ブレーキ鳴きが出る: 異音. 振動. 効き不良


ブレーキ鳴き 問題点1

不具合1[ブレーキ鳴きが出る]
“ブレーキ鳴き”は、パッドとローターの間で発生する摩擦力が原因で振動がおこる現象です。
この振動の周波数によって、車体振動がおこったり、「キー・グー」等の音として聞こえます。

ブレーキ鳴きを止めたり、かるくするためには、振動自体を無くすことや不快な音にならない周波数にすることが必要になってきます。

また、振動周波数は車種・使用状況・使用環境等で変化しますので、常に現状の的確な把握がブレーキ鳴き対策のポイントとなります。

動いている物体に静止している物体を押し付けると、その大小の差はありますが、かならず振動は発生します。
その例としてわかりやすいのがレコードプレーヤーがあげられます。プレーヤーの針はレコード盤に刻まれた溝の上に、ある一定の圧力でおしつけられており、レコード盤が回転することによって針が微振動を起こします。
この微振動を増幅器が増幅しスピーカーを介して音を発生しているわけです。

() レコード盤=ローター、プレーヤーの針=パット、増幅器=足回り・キャリパー・車体.

自転車のブレーキも同じことです。回転しているローターにパッドを押し付けるのですから、レコード盤と針の関係にあります。ブレーキでの増幅器の役割はキャリパーや周辺の懸架装置などです。ローターとパッドの振動がキャリパーや周辺の懸架装置などにつたわり、これらの部品が共振し音となって聞こえます。
発生の度合いは、摩擦面・ローター面の状態も大きく影響してきます。

不具合問診[不具合問診]: 問診により不具合各部位の推測や対応を検討します。
一般的にブレーキ鳴きのなかで「キー音」が多いため、詳しい問診を行わずにブレーキパッドの脱着を行い、パッドへ必要以上に対策を行った結果、制動力不足や早期磨耗の原因を作ってしまうこともあります。

[1]. 音の種類: どのような鳴きか?(キー音・グー音)
異音との区別(ガー音・グー音は異音としてべつの対応が必要です。)

[2]. 状況: いつ発生したか?、そのときの天候は?、発生頻度は?、発生場所は?

[3]. 温度: 走り出してどのくらいか?(時間・距離)

[4]. フィーリング: ブレーキのかけ方(急制動・緩制動)、ブレーキをかけていないときは?

ブレーキを軽く踏んだ時や停止寸前にキー音が発生する 問題点2

不具合2[ブレーキ鳴きがキー音と判断した場合]
ブレーキ鳴きで一番多いのがキー音です。また、関係している部位が多く、的確な対応を行っても使用状況の変化や気候の変化で再発する可能性があります。

ブレーキ鳴きの低減方法はいろいろありますがここでは一般的に有効とされている方法をご紹介いたします。

[1]: パッドの残量確認
ブレーキパッドの残量が少なくなると鳴きやすくなる傾向があります。また残量がなくなるとパッドウェアインジケーターがローターに接触し音により磨耗を知らせます。

[2]: ローター点検。表面研磨・段つき除去・反り・振れ点検
ローターの段付や表面が荒れていると、鳴きの原因になります。ローターの点検確認を定期的に行ってください。

[3]: キャリパー稼動部の点検・グリス塗布
キャリパーの点検を行い、稼動部に適切にグリス塗布を行ってください。

[4]: 形状加工
ブレーキパッドの摩擦材表面の加工によりブレーキ鳴きを軽減できる場合があります。(スリット等)

[5]: シムの点検とグリスの塗布
シムが未装着の場合やグリスの塗布が行われてないと鳴きやすくなります。
また、シムを点検し、錆や破損がないことを確認し、グリスを適切に塗布してください。

[6]: ピストンバック
キャリパーピストンを点検確認し、ピストンを押し戻しスムーズな可動を確認してください。

[7]: パッド裏板点検、修正
ブレーキパッド裏板が変形や反った状態だとブレーキ鳴きの原因になる可能性があります。

パッドの残量[パッドの残量]
自動車メーカーの基準ではブレーキパッドの使用限界は残量1mmの会社もあります。
しかし、この使用限界はあくまで限界ですので、安全のためには残量2~3mmを推奨します。

また、最近のブレーキパッドには(すべてではないですが)磨耗センサー(ウェアインジケーター)が装着されており、使用限界に近くなると、異音を発生させて知らせる仕組みもあります。

万が一ブレーキパッドの使用限界を超えた場合、対面するローターに損害を与え、最悪ブレーキが利かなくなり、危険を伴います。したがってブレーキパッドの残量は定期的に確認を行い、次回点検時までに余裕をもった交換が必要となります。

[特記事項]
ブレーキパッドがだめになると、ローターまでだめになります。逆にローターがだめになるとブレーキパッドもだめになります。両方の定期的な点検が必要です。
このことからブレーキパッドの交換については、残量5mmぐらいから注意が必要となります。
[]: 2mmのところはヒートバリアである断熱材になります。
うすくなるとやきがはいってしまい、ブレーキオイルが沸きます

ローターの状態[ローターの状態・段付磨耗・スコーリング]
スコーリング(溝状磨耗)や段付磨耗になるとブレーキ鳴きの原因になります。
この場合研磨を行うか、ローターそのもを交換する必要があります。
セミメタ: ブレーキを踏んでいなくてもローターが削れる。
高速でローターがガタガタぶれる ⇒ この場合パットとローターを同時に変える。
キャリパーの状態[キャリパーの状態]
各部のグリス塗布を行い可動部がスムーズに動くことを確認してください。
また、キャリパーピストンのダストブーツの点検及びピストンの動きを確認し必要に応じてオーバーホールを行って下さい。

形状加工による対応[形状加工による対応]: 形状加工は必要以上に大きくしない事(早期磨耗防止の為)。

端部チャンファーカット:
キー音、チー音に対し効果大。
加工許容寸法
1. 摩擦材面表面積の20%以下に抑えてください。(早期磨耗に影響するため)
2. A寸法の最大値は15mm以下。
3. B寸法の最大値は8mm以下

スリット加工
加工許容寸法
①A加工巾は2.5+-0.5mm
B加工深さはプレート面より少なくとも1.0~1.5mmの摩擦材厚を残して下さい。


ブレーキを踏んだ時にゴー・グー音がする 問題点3

不具合3上記の不具合は下記の項目が原因で起こります。

[1]: 磨耗により摩擦材がなくなり裏板がローターに接触
⇒ ブレーキパッドの交換及びローターの研磨または交換により改善できます。

[2]: ローターが過度の熱履歴を受けひずみが発生した場合
⇒ ローターの状態を確認し、必要であれば研磨または交換をおこなってください。

[3]: ローターに錆が発生した場合(ジャダーが発生)
⇒ 洗車程度で発生した錆であれば数回ブレーキを使用すれば自然と回復しますが、ローター表面を著しく荒らしてしまう程の錆が発生した場合は研磨、もしくは交換が必要になります。
結防止剤、海辺に止めていることによってさびやすくなり発生。

[4]: ローターとパッドの間に異物が噛みこんだ場合
⇒ 異物を取り除き、ブレーキパッド及びローターの確認を行い、著しく磨耗・変形がある場合は交換もしくは研磨が必要になります。

[5]: キャリパー取り付けに不具合がある場合
⇒ キャリパーの組み付け状態を確認し、作動の確認を行ってください。

ブレーキをふまない時の異音 問題点4

不具合4ブレーキを踏まない状態で発生する異音で考えられる不具合は、ブレーキパッドの引きずりです(キャリパーがきちんともどってない!)。

通常キャリパーの状態が良好でパッドの組み付けが正常であれば起こりにくい現象です。
このことからブレーキパッドの組み付け点検及びキャリパーの点検で解決できます。

ブレーキを踏むと振動が出る 問題点5

不具合5ジャダー: ブレーキを踏んだときにハンドルやブレーキペダルに振動が発生することを「ジャダー」といいます。

このジャダーは一般的にブレーキの不具合とされていますが、実際はブレーキをきっかけとした車体全体の不具合でもあります。

[1]. ローターの歪み・変形
[2]. ローターの偏磨耗
[3]. ローターの腐食(錆)
[4]. サスペンション関連の不具合
[5]. ホイールハブ関連の不具合

ローター関連の不具合対処法は異音で取り上げた内容と同様です。
サスペンション関連及びホイールハブ関連の不具合については各メーカー整備基準に準じた点検・整備を行ってください。

ブレーキの効きが悪い・効かない 問題点6

不具合6ブレーキの効き具合は車両やドライバーにより評価がまちまちですが、ここでは取り付け直後の効き不良と、使用中の聞き不良について説明します。

[1]. ブレーキパッドとローターの当たり不良
一般に新品のブレーキパッドと新品のローターの組み合わせの場合、お互いの表面は平面に研磨されているため均一に接触します。それに対し使用済みのローターに新品のブレーキパッドを装着した場合、たいていの場合はローターが消耗しているために均一にブレーキパッドと当たらず効き不良になる場合があります。
この場合面当たりの状況を確認し、ローターの研磨及び交換が必要になります。

[2]. キャリパー作動不良
キャリパーが作動不良(スライドピン固着・シリンダーピストン固着)の場合、キャリパーオーバーホールもしくは交換が必要です。

[3]. ブレーキパッドの組み付け不良
組み付け時に正規の装着場所以外で組み付けていたり、設定車以外のブレーキパッド(摩擦材位置違い)を組み付けた場合、正常な制動が得られない場合があります。
この場合組み付けの確認と設定車種の確認をおこなってください。

使用中の効き不良 問題点7

不具合7ブレーキは車の走行エネルギーを熱に変換し車をとめる装置です。このことからブレーキを頻繁に使用すると、ブレーキ自体が発熱し高温になります。
走行中の効き不良には熱が起因して発生するものとしてフェードとベーパーロックがあります。

[1]. フェードによる不具合
ブレーキを使いブレーキパッドの温度が摩擦熱により上昇すると、ブレーキパッドの摩擦材に使われている樹脂成分(フェロード樹脂)が熱により分解されガスが発生します。フェードはこのガスがブレーキパッドとローターの間で潤滑の動きをしてしまい、一時的にブレーキの効きが低下します。この場合、エンジンブレーキ等でフットブレーキ使用を控えることで従来の効きにリカバリーします。

しかし、フェード状態が繰り返し起こるような使用を行うと磨耗が急激に進み、摩擦材表面が灰化した事による性動力不足になり、最悪ブレーキが効かなくなる可能性があります。この事より、過積載や高負荷運転は行わないようお願いいたします

フェードを防ぐには
・ 焼き入れ/発生するガスを出しておく(焼くとやわらかくなってあたりが早くなる)
・ 気効率の高い材質でガスを逃がす(スリットをいれるといいが、鳴きは増える)

[2].ベーパーロックによる不具合
ベーパーロックはブレーキパッドで発生した熱がブレーキフルードに伝わり、高温にさらされた時にブレーキフルードが沸騰し、ブレーキ配管内に気泡ができることをいいます。この事によりブレーキペダルを踏んだ力がキャリパーに伝わらずブレーキが効かなくなります。ベーパーロックは高負荷運転中にも球に発生する場合もありますが、多くは高負荷運転後の停止時に起こります。これは車両停止時は走行風によるブレーキ全体の冷却がなくなり急激にブレーキ周辺の温度が上昇するために起こります。

また、ブレーキフルードの交換を長期間行わないと、ブレーキフルード内の水分量が増加し、沸騰温度が低下することでベーパーロックが発生しやすくなります。

ベーパーロックが発生した場合、ブレーキが冷えるとブレーキペダルの踏み応えは元に戻りますが、ブレーキ配管内に気泡が残るので、ブレーキのエアー抜き作業が必要です。

[トピック]
ブレーキパッドは錆がキライ。
通常ブレーキパッドは水に濡れても錆が発生しにくい様政策されていますが、寒冷地の融雪材や海沿いでの塩害等でごく稀ですが錆びる場合があります。
この錆が摩擦材剥離の原因になることもありますので定期的なメンテナンスが必要です。

ブレーキパッドの減りが早い 問題点8

不具合8ブレーキパッドは通常、適合車種での想定距離を目安に開発されております。
しかし、運転状況や積載状態等で大きく変化します。減りが著しく早い場合は下記の原因が考えられますので点検・調整が必要になります。樹脂は熱に弱く、300℃で分解してしまいます。

[1]. 高負荷運転によりブレーキパッドが高温で使用された。
ブレーキパッドの消耗は使用温度が高くなると早くなる傾向があり、特に使用温度限界付近での磨耗は7~8倍以上になることもあります。

[2]. キャリパーの作動不良による引きずり
キャリパーの整備不良による動作不良や錆固着による引きずりが原因の場合、熱が発生し異常磨耗がおこります。このときブレーキの片効きやブレーキパッドの偏磨耗を起こすこともあります。

[3]. ローター表面の荒れ
ローター表面が錆等で著しく荒れている場合やローターが偏磨耗しているとブレーキパッドの早期磨耗を起こす原因になります(やすりでけずっているのと同じ状態になります)。

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